私が望んでいたライフスタイルがこの地にあった
山中敏枝(山梨県都留市の地域プロデューサー、60歳)
Q:都留市ではどのようなお仕事をされていますか。
山中:着任してからまず取り組んだのは、都留市役所の隣にある「移住定住相談センター」に無料で泊まれる一泊二日の「移住・定住体験プログラム」を組み、移住コーディネータとして相談を受ける仕事でした。都留市への移住を考えている方のリスト登録が100名を超え、体験プログラムを希望されていらっしゃいます。
都留市の地域おこしはスタートしたばかりです。都留市は「生涯活躍のまち・つる(都留市版CCRC)」構想を掲げ、現在「CCRC構想研究会」で地元の市民と種々の業者が集まり、今後の展開を話し合いながら進めています。
「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」のポイントは、①移住促進 ②サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の建設 ③地域包括ケアの構築の3点です。「サ高住」はまだ建設予定段階であり実物を見ることができません。実際に「都留市への移住」を検討している方々と「つくる会」を立ち上げ、そこに住む予定の方の「思い」や「希望」を取り入れたサ高住をいっしょに作り上げていく事が重要と考えます。 また、サ高住を作ることが重要なのではなく、最終的には「地域包括ケア」を実現させ、「生涯安心して住める街」を作ることが最終目標と考えます。
都留市には都留文科大学等、3つの大学があります。これを活かして、「大学連携型CCRC」を作る予定です。市民は大学の図書館を利用できたり、大学の特別講座も受講できるような生涯学習の場を作っていく予定です。私は還暦を前にして、仕事を終えたら、これまでできなかった、水彩画や歴史を学ぶ生活をしたいと考えていました。そのライフスタイルが、ここ都留で可能になりそうです。偶然も重なってここに至りましたが、今後の「大学連携型CCRC」にとても期待しています。
Q:地域プロデューサーに必要な特質はありますか。
山中: 地域プロデューサーに必要な特質は、特にありません。強いて言えば「自分を変えられる勇気を持つ」ことでしょうか(笑)。
一番重要な要素は「人間力」だと考えます。これは年齢や性別、キャリア、知識では計れません。むしろ、長い人生で知らず知らずのうちに付いた「自分の色(物事の見方)」を落とすことから始めることが大切だと考えます。素晴らしいキャリアを持っている人ほど、これまでの自分の置かれた地位や、会社の看板で養われたプライドやモノの見方をリセットすることが難しいと感じます。私もそうでした。私は59歳で地域プロデューサーになりましたが、これまで生きてきた人生(モノの見方・考え方)を一度リセットし、一から組み立て直すことは、なかなか大変なことだと実感しています。地域プロデユーサーとして日々活動することによって、その地域の人々とコミュニケーションをとり、誰かに必要とされる人となることを目指しています。自分の少しは得意な分野を活かし「まち・ひと・しごと」を結び付けることができればと考えます。
山中敏枝
2015年4月(株)コミュニティネット入社。Y県で市民会館に勤務していたが、還暦を前にして「もう一度学びたい」という思いが募り、島根県にある六日市学園に入学し介護を学ぶ。女子寮に入って「青春を再び謳歌」。在学中にコミュニティネット高橋社長の著作『老後をさびしく耐えますか、ともに楽しく生きますか。―――文化的介護をめざしたシニアハウス・ライフハウスづくりの十五年 (高齢社会をゆたかに生きる)』を読んで共感し、同社に入社。2015年8月に都留市から地域おこし協力隊に任命され、当地に赴任した。